【進撃の巨人】第96話『希望の扉』考察・解説・感想【ネタバレ】

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進撃の巨人96話『希望の扉』のあらすじ

回想(845年~847年)

ライナーの回想の続き。
マルセルを失ったライナー・ベルトルト・アニは、このままでは帰れないことを悟り、3重の壁に侵入することを決める。
ウォール・マリアまで女型の巨人で移動し、壁の近くでベルトルトが超大型巨人に巨人化。
そして、ライナーは鎧の巨人になり、シガンシナ区内門を壊した。

壁の中に潜伏したライナー達は、壁内人類に紛れながら、始祖の巨人に関する情報を探る。
調査の限界を感じた彼らは、兵士になって中央憲兵に接近するべく、訓練兵団に入団する。

現在(854年)

無し(回想のみ)

進撃の巨人96話『希望の扉』で発生した伏線・謎

Qダイナ巨人が近くにいたベルトルトを無視した
(24巻96話)

A
(34巻139話)

関連進撃全話の伏線・謎まとめ

残された謎

Q
(24巻96話)

A
(巻話)

進撃の巨人96話『希望の扉』で解決した伏線・謎

進撃の巨人96話『希望の扉』の表現・対比

進撃の巨人96話『希望の扉』の考察・解説

進撃の巨人96話『希望の扉』の考察・解説動画

サブタイトル『希望の扉』の意味

追い詰められたライナー達から見たシガンシナ区の門(扉)は、希望の扉に見えた。
関連進撃全話のサブタイトルの意味を考察

ポイント:ライナーが作戦を継続した本当の理由

英雄願望と壊れた支柱の再構築

マルセルの死が招いた作戦の継続

マーレ戦士4人による始祖奪還作戦は、序盤から波乱の幕開けとなりました。

作戦の要であったマルセルが、無垢の巨人に喰われたことで、リーダーを失うという予想外の展開に。

この時、アニとベルトルトは帰還を提案します。

しかし、ライナーだけは「戻れない」と呼び止めたのです。

その理由は一言では語れません。

表面的には「失敗すれば鎧の巨人を剥奪される」ことへの恐怖がありました。

けれどもその奥底には、もっと切実な理由がありました。

「母との約束」がライナーの背中を押した

ライナーの脳裏に浮かんだのは、出発前の母の言葉です。

「お前なら必ず任務を果たせる。きっと父さんもお前の成功を祈ってくれているから」

この言葉を信じて島に渡ったライナーは、今帰ったら何もかも失うことを理解していました。

父と再会し、家族3人で暮らすというささやかな夢。

それを叶える唯一の手段が「任務の成功」だったのです。

だからこそライナーは、帰還という選択肢を拒みました。

ライナーの通過儀礼:壊れた幻想と生まれた大義

さらにこの出来事は、ライナーにとっての精神的な通過儀礼でもありました。

マルセルから真実を知らされたことで、ライナーは自分が戦士として選ばれた理由が「政治的工作の結果」であると知ります。

また、命を救われたにも関わらずマルセルを喰った巨人を放置したことに対する後悔も抱えていました。

つまり彼は、自分の無力さ・選ばれし者という幻想・英雄願望のすべてを否応なく突きつけられたのです。

しかしここからライナーは、新たな拠り所として「人類を救う」という大義名分を自らに課します。

「時間がかかったって進むしかねえだろ」

「人類の運命は俺たちの手にかかっている」

このような発言からも分かる通り、ライナーは再び歩き出すために、自分自身を“英雄”として定義し直したのです。

アニとの対比:「大義」と「個人」の選択

一方、同じ始祖奪還作戦に同行していたアニは、まったく異なる立場を取っていました。

彼女は父から「名誉も称号も捨てていいから帰ってきてくれ」と言われていたこともあり、

作戦失敗のタイミングでは、「帰ろう」と真剣に提案しています

アニにとって重要なのは、「世界を救う」ことではなく、父のもとへ生きて帰ること

そのため彼女は「名誉マーレ人」「選ばれし戦士」などの称号を「全部クソったれで嘘つき」と痛烈に批判します。

ライナーが「世界を救う大義」に酔って生き延びようとするのに対し、アニは「自分のためだけに生きたい」と願っている。

この対比が非常に鮮やかで、キャラクターの深みを際立たせています。

ケニーの言葉が重なる:「酔わなきゃやってられない」

このライナーの行動は、後にケニー・アッカーマンが語った有名な言葉――

「みんな何かに酔っ払っていないとやってられなかったんだ」に重なります。

ライナーにとっての“酔い”は、英雄という虚構。

それがなければ、彼は自分を保つことすらできなかったのです。

エレンとの対比と「帰る」という言葉の重み

ライナーとエレンは、まるで表と裏の主人公のように描かれています。

24話の表紙でも、3人ずつ対になる形で登場しています。

エレンが「5年ぶりだ」と語ったセリフは、後にライナーに対して「4年ぶりだな」と返されることで、

二人の立場の逆転と、視点の転換が象徴的に描かれます。

また、「帰る」という言葉は、ライナーにとってはもはや失われた希望でした。

壁内に潜伏する中で、「もう帰れない」と悟ったからこそ、彼は新たな物語=大義に自分を縛りつけて生き続けようとしたのです。

過去の謎が明かされる構造的巧妙さ

このエピソードでは、読者が疑問に思っていたいくつかの謎も回収されています。

  • なぜ女型の巨人(アニ)は襲撃に参加しなかったのか → 疲労のため不参加

  • 顎の巨人をなぜユミルが奪われなかったのか → ライナーが逃げていたため

  • 襲撃時に大量の巨人が現れたのはなぜか → アニが叫びで巨人を誘導した

  • ベルトルトが語った「嘘」の元ネタ → 南東の山奥の男性のセリフの模倣

こうした細かい要素の数々が、ライナーの回想とともに繋がっていく構成の妙は圧巻です。

他民族系エルディア人の差別と血の呪い

さらに作中では、エルディア人内部でも差別が存在していることが描かれています。

かつての王政が「他民族系エルディア人を排除した理由」は、「血が穢れる」「思想を支配される恐れがある」からだと示されています。

ヒストリアの母が処刑されたのも、こうした血と支配をめぐる思想闘争の中に位置づけられていたのです。


まとめ:ライナーの継続の理由は「崩壊」から生まれた

ライナー・ブラウンが作戦を続行した理由は、単なる任務遂行の責任感ではありませんでした。

それは、家族への思い、幻想の崩壊、自分を保つための大義名分など、複雑な感情が絡み合った結果なのです。

そして彼は、英雄という幻想に酔い、自らを突き動かすことでしか生きられない――

そんな不器用で、切なくて、哀しい人間性の持ち主だったといえるでしょう。

進撃の巨人96話『希望の扉』の感想・ネタバレ

進撃の巨人96話『希望の扉』の感想動画

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